- 著者
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小西 瑞恵
- 出版者
- 大阪樟蔭女子大学
- 雑誌
- 大阪樟蔭女子大学学芸学部論集 (ISSN:18807887)
- 巻号頁・発行日
- vol.47, pp.45-55, 2010-01-29
本稿は日本の中世社会で都市の女性たちがどう暮らし、どう働いていたのかという問題を、古文書・狂言・職人歌合などを通じて明らかにしようとしたものである。戦後発達してきた日本の女性史研究は、今やジェンダー研究の段階に到達しているため、ジェンダー(社会的性別)のありかたに目標をしぼって問題を検討し、近世・近代社会への見通しをも試みた。第一章では、職人歌合を取り上げて、『七十一番職人歌合』を中心に検討し、142人の職人のうち、34人(35人)を占める女性職人の活躍は社会の実態を示しており、女性職人は職種を限定されるが、特定の業種ではむしろ独占的に営業していたことを明らかにした。第二章では、中世ヨーロッパの女性職人・商人について検討し、阿部謹也やエーリカ・ウイツ、レジーヌ・ペルヌーらの仕事に依りつつ、その活躍の実態と社会的地位の変化について考察した。第三章では、日本の女性の社会的地位の変化について検討し、女性の活躍が乏しかったとされている近世社会についても、近年の女性史研究の新しい成果により、さまざまな場で自立した女性の活躍が見られることを述べた。中世・近世から近代をつなぐ新しい女性史の構築が今必要とされているのである。