- 著者
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宮田 彬
- 出版者
- 日本鱗翅学会
- 雑誌
- 蝶と蛾 (ISSN:00240974)
- 巻号頁・発行日
- vol.52, no.3, pp.115-121, 2001-06-30
- 参考文献数
- 6
筆者の知る限りでは,ヒメジャノメとヒメウラナミジャノメの「縄張り行動」に関する具体的な報告はない.「縄張り」と関係深い「一定の場所に滞在し見張る」,「同種個体あるいは異種のチョウを追跡する」などの行動は,ジャノメチョウ科に限らず多くの科でも観察されているが,当たり前の現象なのか意外に記録が少ない.そこで予報としてヒメジャノメとヒメウラナミジャノメについて観察した事実を記録し,チョウ類同好者の注意を喚起したい.観察場所は,大分市富士見ヶ丘の自宅の庭とその付近である.ヒメジャノメM-1個体:2000年7月27日-8月1日まで,B地点の数本のベニカナメモチが植わったやや暗い一角に本種の雄がおり,早朝,いつも高さ約1mあたりから飛び出した.夜はその辺りで眠ったらしい.8月1日,捕えマークした(M-1).その雄は8月5日まで5日間毎日同じ場所に出現したが,その日から8月8日まで留守をし,帰宅後は見られなかった.マーク前の7月27日から31日まで見られた個体も同一個体と思われ,それはベニカナメモチの垣根を中心に直径約2-3mほどの狭い「縄張り」を10日間も占拠していた.その間,同種または異種のチョウとの関係は観察出来なかった.ヒメジャノメM-2とM-3:8月8日以来,新鮮な雄がBの外側の隣家のヤマモモの木陰付近を占拠していた.8月12日,早朝,Bに来たので,捕らえマークした(M-2).翌日の朝,M-2はAのアラカシの高さ160-170cmの葉上にいた.午前8時30分,そこから2mほど南のAのブルーベリーの葉上に別の新鮮な雄(M-3)がいた.その時,M-2の所在は分からなかった.午後6時50分,M-2が突然Eの池の縁に現れ,やがて東側のアジサイの茂みに姿を消した.その後,両個体とも二度と見られなかった.マーク前の8月8日から11日まで4日間見られた雄と,M-2は同一個体らしい.8月13日に縄張り外のAやEに姿を見せたのは,別の雄M-3がAに現れたことと関係があるかも知れない.ヒメウラナミジャノメの場合:8月27日からDのアベリアの垣根で毎日見かけた雌と同一と思われる個体が,30-31日,アベリアの高さ60cmの下草で翅を閉じぶら下がり眠っていた.その雌はマーク後もDの狭い場所に留まり,9月2日まで見られ,縄張り内のキク科植物の花をよく吸蜜し,また時々ガクアジサイの葉上で翅を半開きにして静止していた.この個体も同種の他個体または異種と接触する場面は観察出来なかった.