著者
中澤 高志
出版者
地理科学学会
雑誌
地理科学 (ISSN:02864886)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.59-81, 2010
参考文献数
46

大分市では,新産業都市への指定を機に人口が増加し,その受け皿として多くの郊外住宅地が形成された。本稿では,大分市の郊外化の過程を跡付けるとともに,ある郊外住宅地の住民像とそこにおける世代交代の現状を把握し,子世代の動向や親世代の意向に基づいて今後の変容について展望した。大都市圏の郊外住宅地と同様に,対象世帯のほとんどはホワイトカラーの夫と専業主婦からなる核家族世帯であったが,夫に関しては,転勤を契機として大分市に住み始めた者が多い点が特徴的である。対象世帯のほとんどは現住居への住み続けを希望しているが,住民の高齢化に伴って日常生活に不便をきたすことが懸念される。大分市内に居住する既婚の子世代の大半は親と別居しており,半数以上はすでに自分で持家を取得している。したがって,子世代が親世代の住居を継承して住むことはそれほど期待できず,長期的には空き家の発生などが懸念される。一方で,世代間の社会階層の再生産はなされており,大分市内に居住する子世代には,ホワイトカラー層が多く居住する大分市の西部に居住地を選択する傾向がみられた。このことは,都市内部の居住地域構造が,子世代の居住地選択を通じて世代を超えて引き継がれていく可能性を示唆している。

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