- 著者
-
森山 昭雄
- 出版者
- 一般社団法人 日本生態学会
- 雑誌
- 保全生態学研究 (ISSN:13424327)
- 巻号頁・発行日
- vol.5, no.1, pp.7-41, 2000
- 参考文献数
- 14
- 被引用文献数
-
9
2005年愛知万博の会場予定地,海上の森を特徴づける湿地生態系の成因を明らかにするために,河川の河床縦断形の測量と豊水期と渇水期の河川流量・水質を計測する水文地形学的な調査を行った.その結果,砂礫層地域では,砂礫層中に挟まれるシルト層・粘土層が河床縦断形の遷急点を形成し,比流量が大きく,そこから湧出する地下水によって湿地が形成されていることが明らかとなった.本地域の地質構造は,地殻変動によって緩やかに西方に傾く構造となっている.基盤の花崗岩類と砂礫層が接触する基底面および砂礫層に挟まれるシルト層も西方に傾斜しており,流域を越えて西方に向かう大規模な地下水流動が推定された.花崗岩地域では,断層が地下水流動の水みちとなっている可能性が高いことを指摘した.万博関連の環境影響評価調査は,個々の調査自身はハイレベルであるが,その解釈と評価は恣意的であり,間違った結論を導き出している.特に,湿地生態系に大きな影響があると思われる深層地下水に関しては,調査もされていないことは基本的に問題であることを指摘した.