著者
田端 健人
出版者
宮城教育大学
雑誌
宮城教育大学紀要 (ISSN:13461621)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.199-206, 2010

ハイデガー(Heidegger, M.)の思索に、教育哲学あるいは教育論はあるのだろうか。本稿は、ハイデガーが教育を語った重要な箇所、プラトン『国家』「洞窟の比喩」解釈に着目し、パイデイア(παιδεια =教育)に関するハイデガーの思索を再構成する。プラトン『国家』における「パイデイア」というギリシア語は、一般的に、「Bildung(陶冶、教養、人間形成)」とか、「Erziehung(教育)」とドイツ語訳されるが、ハイデガーは、こうした翻訳を、19世紀の「心理学主義」の産物として厳しく批判する。19世紀前半に活躍したヘルバルト(Herbart, J. F.)も、ハイデガーによれば、心理学主義を創始推進した人物である。本稿ではまず、ハイデガーのこうした心理学主義批判とその克服を考察する。そして、プラトンのいうパイデイアは、ハイデガーにとって、「現存在(Dasein)」や「世界内存在(In-der-Welt-sein)」といった概念と同様、人間存在の新たな規定様式だったことを指摘する。次に本稿では、プラトンのパイデイアに関するハイデガー独自の翻訳に着目し、この翻訳に凝縮されたハイデガーのパイデイア論を、1928/29年冬学期の「哲学入門」講義をもとに解釈する。こうした解釈を通して、ハイデガーのパイデイア論は、私たちが慣れ親しんでいる教育活動を改めて捉え直すための、一つの「教育哲学」になりうることを示したい。

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