著者
岩本 康志 福井 唯嗣
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学論集 社会科学系列 (ISSN:02879719)
巻号頁・発行日
no.28, pp.159-193, 2011-03

本稿は、医療・介護保険財政モデルの最新版(2009年9月版)を用いて、長期的な視野からの社会保障の公費負担の動向について分析する。今回のモデル改訂では、社会保障国民会議の医療・介護費用のシミュレーションの経済前提を取り入れるとともに、国民健康保険と全国健康保険協会管掌健康保険の加入者数を推計することで、これらの制度への公費負担を考慮に入れた。 社会保障国民会議による推計によれば、医療・介護費用に対する公費負担は、2007年度から2025年度までGDP比で1.8%増加する。本稿の分析では、2025年度以降も公費負担の増加がつづき、2050年度にかけてGDP比で2.3%(医療が1.25%、介護が1.05%)増加すると推計された。さらに、2050年度以降も約20年間にわたり、公費負担は増加を続ける。長期的視点にたった税制のあり方を検討する際には、このことを考慮に入れて、安定的な財源確保の手段を考えるべきである。 後期高齢者に重点的に公費が投入されていることから、将来の公費負担の伸び率は保険料の伸び率よりも高いことを今回の推計は示している。すでに混迷しつつある税による財源調達は、今後はさらに困難になることが懸念される。財源調達の重点を税から保険料に移す方向への改革も検討する必要がある。その際には、給付と負担の関係をより明確にし、国民の理解を得る制度上の工夫が必要である。医療・介護費用の事前積立はその工夫の一つである。

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