- 著者
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寺田 良一
- 出版者
- 環境社会学会
- 雑誌
- 環境社会学研究
- 巻号頁・発行日
- no.4, pp.7-23, 1998
- 被引用文献数
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1
環境運動は、NPOや慈善組織など非営利法人制度を持つアメリカやイギリスで、穏健な中流の自然保護運動として早くから制度化され、組織基盤の確立や環境政策決定への影響力増大に寄与した。1970年前後に登場した「新しい社会運動」的性格を持つ環境運動も、アメリカを中心に「アドボカシー型NPO」として制度化が進み、圧力集団として影響力行使のチャネルを確立したが、同時に制度化により「体制編入」や運動の保守化が進んだと、草の根環境運動等から批判を受けることとなった。一方、アメリカで1980年以降台頭した産業公害、廃棄物問題等の社会的格差や不平等を問題にする草の根環境運動は、地域レベルの運動の支援強化、「エンパワーメント」を志向した制度化をめざす。本稿は、環境運動の制度化がもたらす「体制編入」と「エンパワーメント」という2つの効果を、政治的リベラリズムから新保守主義への転換という1970年代以降の公共政策をめぐる政治状況の変容から分析する。