著者
寺田 良一 舩橋 晴俊 平林 祐子 堀田 恭子 藤川 賢 堀畑 まなみ 原口 弥生 湯浅 陽一
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究においては、近年の急速な経済活動の国際化に伴い問題化しつつあるアジア太平洋地域における、環境負荷の移動、環境政策の相互影響、環境運動の交流などについて、一方で包括的にその時系列的、空間的な流れを解明する「環境総合年表」(すいれん舎刊)を作成し、もう一方で、その個別性と普遍性を考察する定性的比較研究(日本、韓国、中国、台湾、インド、米国等)を進め、研究成果報告書を刊行した。
著者
寺田 良一
出版者
環境社会学会
雑誌
環境社会学研究
巻号頁・発行日
no.4, pp.7-23, 1998
被引用文献数
1

環境運動は、NPOや慈善組織など非営利法人制度を持つアメリカやイギリスで、穏健な中流の自然保護運動として早くから制度化され、組織基盤の確立や環境政策決定への影響力増大に寄与した。1970年前後に登場した「新しい社会運動」的性格を持つ環境運動も、アメリカを中心に「アドボカシー型NPO」として制度化が進み、圧力集団として影響力行使のチャネルを確立したが、同時に制度化により「体制編入」や運動の保守化が進んだと、草の根環境運動等から批判を受けることとなった。一方、アメリカで1980年以降台頭した産業公害、廃棄物問題等の社会的格差や不平等を問題にする草の根環境運動は、地域レベルの運動の支援強化、「エンパワーメント」を志向した制度化をめざす。本稿は、環境運動の制度化がもたらす「体制編入」と「エンパワーメント」という2つの効果を、政治的リベラリズムから新保守主義への転換という1970年代以降の公共政策をめぐる政治状況の変容から分析する。
著者
舩橋 晴俊 寺田 良一 中筋 直哉 堀川 三郎 三井 さよ 長谷部 俊治 大門 信也 石坂 悦男 平塚 眞樹 小林 直毅 津田 正太郎 平林 祐子 金井 明人 仁平 典宏 土橋 臣吾 宮島 喬 壽福 眞美 池田 寛二 藤田 真文 鈴木 宗徳 羽場 久美子 茅野 恒秀 湯浅 陽一 須藤 春夫 佐藤 成基
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-05-31

本年度は, 年度途中で廃止になったが, それでも, 下記の研究実績を上げることができた。【公共圏とメディアの公共性班】法政大学サスティナビリティ研究所内の「環境報道アーカイブス」に蓄積した東日本大震災及び福島原発関連の映像に付されたメタデータの分析を行った。分析から, 震災・原発関連番組の論点の変化や報道対象地域の偏りなどを見出した。【エネルギー政策班】『原子力総合年表一福島原発震災に至る道』を2014年7月に公刊した(すいれん舎刊)。また, 青森県下北半島における核燃料サイクル事業の動向を把握するため, 『東奥日報』を基に詳細年表を作成し, 地域社会の長期的な構造変動を追跡可能な情報基盤を整えた。エネルギー戦略シフトに関し, 各地の市民団体の調査および支援を実施した。【年表班】英文環境総合年表(A General World Environmental Chronology)を刊行した。英文による包括的な年表は世界初の試みであり, 環境問題に関する国際的なデータベース構築の第一歩を記した。また, その年表の成果をもとに, 7月に国際シンポを開催し, 各国の研究者との交流を図った。【基礎理論班】2013年12月に開催した国際シンポと講演会を基に, 論文集『持続可能な社会に向かって―ドイツと日本のエネルギー転換(仮題)』(法政大学出版局, 2015年)の編集作業を継続している。並行して, 『ドイツ・エネルギー政策の形成過程1980~2014―資料集』(新評論, 2015年)の本文編集作業はほぼ終了し, 現在は巻頭論文を執筆中である。【食・農と包括的コミュニティ形成班】学内の「食・農」に関する社会的活動拠点でもある「スローワールドカフェ」の活動に関与しながら, 個別に研究を進めてきた。研究成果は, 社会学部授業科目「社会を変えるための実践論」と「多摩地域形成論」に一定程度反映させてきている。
著者
寺田 良一
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.319-320, 2012-09-30 (Released:2013-11-22)
著者
帆足 養右 平林 祐子 船橋 晴俊 寺田 良一 池田 寛二 高田 昭彦 鳥越 皓之 海野 道郎 関 礼子 藤川 賢
出版者
富士常葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本プロジェクトでは、1)環境問題史および環境問題の社会調査史の整理、2)アジア・太平洋地域諸国における環境問題の歴史的展開と環境社会学的調査および研究動向の把握、3)わが国における環境社会学の形成・発展の過程の総合的検討、の3つの作業を行い、下記の成果をまとめた。(1)故飯島伸子・富士常葉大学教授が遺された、公害・環境問題の社会調査資料約6,000点の整理分類とデータベース作成作業を行い、それらを収めたCD(Ver.2)と文庫の概要を示すパンフレットを作成した。「飯島伸子文庫」は、環境社会学と社会調査についてのアーカイブとして完成し、一般に利用可能となった。(2)研究分担者らがそれぞれのテーマで、環境社会学の理論的、実証的研究を行い、26本の論文からなる報告書(全423頁)にまとめた。論文のテーマは、飯島伸子文庫と環境年表、日本の公害・労災問題、環境問題と環境運動、環境社会学理論と環境教育、地球とアジア・太平洋地位の環境、の5つに大別される。(3)飯島教授の代表的著作『公害・労災・職業病年表』(公害対策技術同友会,1977年)の索引付新版を出版し(すいれん社より2007年6月刊行)、さらにその「続編」に相当する(仮称)『環境総合年表(1976-2005)』のための準備資料として、『環境総合年表(1976-2005)準備資料1・統合年表』(全317頁)と、『環境総合年表(1976-2005)準備資料2・トピック別年表』(全166頁)を、本プロジェクトのメンバーらで分担・協力して作成した。これらは、主要な公害/環境問題について、分担者らがトピック別に重要事項を挙げた年表を作成する方式で編集され、全部で65のトピックを扱っている。今後更なるデータの吟味・追加が必要ではあるが、飯島教授の仕事を引き継ぎながら、環境問題および環境社会学と調査史について総合的に辿ることのできる資料となっている。
著者
寺田 良一
出版者
都留文科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

1998年の「NPO法」の施行以来、日本においても、小規模な任意団体が主であった環境運動組織が環境NPOとして組織化、制度化され、政策決定に対する影響力や圧力行使、対抗的政策提言活動等を行う基盤が遅れ馳せながら整備された。本研究においては、環境NPOの公式的な組織化、制度化以降の環境運動組織の機能変容、政策提言(アドボカシー)能力や社会的影響力の増大等を、主として定性的に明らかにすることがめざされた。比較的NPOとしての公式化、制度化が進んだアドボカシー型環境NPOを中心として聞き取り調査を広範に進めた結果、以下のようないくつかの知見が得られた。第1に、NPOとしての組織化の経緯から、a)海外の既存の環境NPOの日本支部的に発展してきたもの、b)国内のおいて比較的長期間環境運動や消費者運動としての活動実績を持ち、NPO制度の確立とともにそれへと組織化されたもの、c)比較的最近の環境問題に対応して活動を開始し、当初から環境NPOの形態を採っているもの、といった類型が得られた。全体として、税制優遇や寄付控除制度等を欠いた日本の不十分なNPO制度ゆえに、財政基盤は脆弱であり、政策提言や政治的影響力行使に必要な専門的力量や人材も不十分である。しかしながら、こうした基盤の弱さにもかかわらず、NPOとして公式組織化しえたことで、自治体や企業セクターとのパートナーシップ形成は著しく進展した。事業化や活動の独自性を打ち出し、NPOとしての独自のニッチを見出す努力も見られる。たとえば、海外に本部を持つ既存の環境NPOや新興環境NPOで国際的な活動や国連等をアリーナとした活動が特徴的であったり、草の根的基盤を持っ環境NPOが地域レベルの政策提言等に関与する傾向などが見られる。