- 著者
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竹端 寛
- 出版者
- 国際ボランティア学会
- 雑誌
- ボランティア学研究 (ISSN:13459511)
- 巻号頁・発行日
- vol.10, pp.15-38, 2010
本稿ではボランタリー・アクションの未来を検討する為に、障害福祉政策における一人の社会起業家の足跡を振り返った。ベンクト・ニィリエはノーマライゼーションの原理を成文化し、当時の世界中の障害者福祉政策にパラダイムシフトをもたらした実践家である。当時、入所施設での処遇が「ノーマル」と言われ、それ以外の支援方策が考えられていなかった<制度の未成熟>状態であった。その実態を変える為に、彼は現場に何度も足を運び、その中で問題の本質を洞察し、一般市民の「ノーマル」な生活と対比するというノーマライゼーション原理の本質を思いつき、それを人々の前で語る中で結晶化し、やがて8つの原理というプロトタイプを作り、世界中に広めていった。このプロセスを複雑系モデルやU理論で再解釈することにより、社会変革をもたらした社会起業家の実践として捉えることが出来る。彼の実践の再解釈を通じて、今日の<制度の未成熟>に立ち向かうボランタリー・アクションの未来とはどのようなものであるべきか、のヒントを掴む事が出来た。