著者
竹端 寛
出版者
福祉社会学会
雑誌
福祉社会学研究 (ISSN:13493337)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.49-65, 2018-05-31 (Released:2019-06-20)
参考文献数
29
被引用文献数
2

本稿では,社会福祉の仕組みを批判的に分析することによって,ソーシャルワーカーの理論や実践の発展に役立つ「ソーシャルワーカーの社会学」を提起する.ソーシャルワーカーは自らの権力性を用いて,対象者を支援も支配もできる裁量を持つ存在である.地域変革を実現したソーシャルワーカーは,個人の問題の背後にある構造変動やその力学を見抜くという「社会学的想像力」を活かして,自らの実践を変容させてきた批判的実践者でもある.福祉社会学や社会福祉学の研究者は,批判的実践やその実践者を支える実践的批判者であることが求められている。これらの整理を通じて,「ソーシャルワーカーの社会学」の可能性を提起した.
著者
竹端 寛
出版者
国際ボランティア学会
雑誌
ボランティア学研究 (ISSN:13459511)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.15-38, 2010

本稿ではボランタリー・アクションの未来を検討する為に、障害福祉政策における一人の社会起業家の足跡を振り返った。ベンクト・ニィリエはノーマライゼーションの原理を成文化し、当時の世界中の障害者福祉政策にパラダイムシフトをもたらした実践家である。当時、入所施設での処遇が「ノーマル」と言われ、それ以外の支援方策が考えられていなかった<制度の未成熟>状態であった。その実態を変える為に、彼は現場に何度も足を運び、その中で問題の本質を洞察し、一般市民の「ノーマル」な生活と対比するというノーマライゼーション原理の本質を思いつき、それを人々の前で語る中で結晶化し、やがて8つの原理というプロトタイプを作り、世界中に広めていった。このプロセスを複雑系モデルやU理論で再解釈することにより、社会変革をもたらした社会起業家の実践として捉えることが出来る。彼の実践の再解釈を通じて、今日の<制度の未成熟>に立ち向かうボランタリー・アクションの未来とはどのようなものであるべきか、のヒントを掴む事が出来た。
著者
竹端 寛
出版者
日本NPO学会
雑誌
ノンプロフィット・レビュー (ISSN:13464116)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.33-43, 2011 (Released:2011-12-20)
参考文献数
43

本稿では,NPOのアドボカシー機能の「小さな制度」化とその課題について考察するために,ある精神医療分野のNPOの事例分析を行った.精神医療オンブズマン制度は,NPO団体の活動実績と提言に基づき大阪府で制度化された,アドボカシー機能の「小さな制度」化の実例である.これは一定の成果があったが,財政削減を理由に廃止された.この事例分析を行う中で,NPOの企画提案に基づく行政とNPOの「協働事業」としての制度化プロセス自体がNPOの一つのアカウンタビリティであったこと,アドボカシー機能の「小さな制度」化は府の政策と実践に具体的な事業改善をもたらしたこと,NPOには制度の成果や地方政府との「相補」性の意義等を事業委託主である地方政府にだけでなく政治家や広く市民にも果たすアカウンタビリティが求められていること,の三つが明らかになった.
著者
竹端 寛
出版者
国際ボランティア学会
雑誌
ボランティア学研究 (ISSN:13459511)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.67-83, 2002-11-01

本稿では、日本の精神科ソーシャルワーカー(PSW)の現状と課題について、援助を受ける精神障害者(当事者)の視点に立った分析を行った。分析の際、PSWの関わりの強い精神病院からの退院支援に限定して、その中でも、日本独特の支援形態ともいえる「アパート退院」支援に着目し、この支援についてのPSWの関わりについて調べる中で、次の3つの事が明らかになった。1つ目は、PSWが家族機能の「代行」だけでなく、家族関係の再生のための「仕切り直し」の役割を果たしている、という事である。2つ目は、PSWは「制度的福祉」を利用するが、時としてその枠内では満足な当事者支援が出来ない場合がある、ということである。3つ目は、上述の2つの結果として、PSWが援助を主体的に行えば行うほど、自身の専門領域を越えて「自発的福祉」の担い手として「ボランティアとは言わないボランティア」になっている、ということである。次に本稿では、「家族」「制度的福祉」「ボランティア」をPSWと共に精神障害者支援に不可欠な「福祉資源」と捉え、「即興性」・「定常性」軸、「素人性」・「専門性」軸の2つの軸を使って4つの「福祉資源」を分類した。本来この4つは役割分担しあう関係であるはずが、現状ではPSWが全てを「代行」していることも明らかになった。そして、以上の分析の結果として現状では、個々のPSWや当事者のパーソナリティー如何に関わりなく、当事者は4つの福祉資源全てを一手に引き受けるPSWに対して「お伺いをたて」ざるを得ない状況に構造的に追い込まれてしまう事がはっきりとした。
著者
竹端 寛
出版者
山梨学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

障害福祉領域の支援者が、地域支援において求められる課題について考察した。本研究から、(1)障害者を地域で支える仕組みを作る為に、社会起業家精神を持った支援者が帰納論的方法論を身につけて現場の実践を変える必要があること、(2)このプロセスを支援者が身につける為には、法律や既存の社会資源等の所与の前提(枠組み)を疑い、組み替え、何かを創り出す為の、支援者エンパワメント(=再トレーニング)が必要であることがわかった。