著者
圓田 浩二
出版者
沖縄大学
雑誌
沖縄大学人文学部紀要 (ISSN:13458523)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.83-94, 2010-03-31

本稿の目的は、スターパ・ダイビングというスポーツを行う人々の行為を解明し、その特徴が現代社会とどのように関連づけられるかを探ることにある。ダイパーがどのような動機付けと社会的条件のもとにダイビングを行い、その結果として何を得ているかについて分析・考察を行う。ダイビングを行う人々の行為分析であると同時に、ダイビングを通して現代日本社会のもつ問題を明らかにすることになる。最初にダイビングをフローと位置づけ、次にカイヨワの遊びの概念を用いてダイビングの特徴を明からにする。そして、ダイビングを特徴づける「偶然」と「眩暈」の要素から、現代社会とダイビングの関係性を論じる。現代社会において、ダイビングがスポーツとして、遊びとしての、偶発性に左右され、自己を喪失させ、環境への融合を果たすという、優れた性質をもちながら、その感覚自体が社会制度へと回収されてしまっているではないかと分析している。分析枠組みとして用いるのは、M. チクセントミハイのフロー概念、R. カイヨワの4つの「遊び」の類型、A. ギデンズの再帰性の概念である。結論として、ダイビングを特徴づける偶然と眩暈の要素は、個人にとって、競争と管理、監視、ルーティンによって特徴づけられる日常から引き起こされる存在論的な不安を解消することになる。結果的に、ダイパーが体験として行うダイビングは、現代社会に生きる個人の存在論的な不安を解消する制度として確立されている。

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