- 著者
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井尻 香代子
- 出版者
- 京都産業大学
- 雑誌
- 京都産業大学論集. 人文科学系列 (ISSN:02879727)
- 巻号頁・発行日
- vol.45, pp.315-331, 2012-03
本稿では,国際ハイクにおいて日本の俳句の主要な要素の一つである季語が,どのように受 容されて来たのかを取り上げ,アルゼンチンのスペイン語ハイクの作品分類をベースに考察し た。まず,日本の俳諧の連歌において季語がどのように理解され,発句に用いられたのかにつ いて,芭蕉のことばに着目して検証した。次に,近代俳句における季語観の変化を,無季容認 派と有季定型のホトトギス派の両者について概観した。その上で,アルゼンチン・ハイクの季 語および通年の語の分類を行い,作品における機能を分析した。その結果,アルゼンチン・ハ イクにおける季語および通年のトピックの用法は,近代俳句における季語ではなく,事象の変 化に着目する俳諧の季語のそれに近いことが明らかになった。現在の国際ハイクの詩学は,西 欧詩がロマン主義と前衛派によって詩的言語の変革を経験した際に受容した,日本の俳諧の連 歌の季語観に連なっているのである。