- 著者
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井奈波 良一
- 出版者
- 日本健康医学会
- 雑誌
- 日本健康医学会雑誌 (ISSN:13430025)
- 巻号頁・発行日
- vol.20, no.4, pp.214-217, 2012-01-31
- 被引用文献数
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日本の花火は,多くの研究開発の結果,世界で最も精巧で華麗なものとして全世界から絶賛されている。日本の花火大会は,江戸時代に全国的な飢饉と疫病(コレラ)の流行による多数の死者の慰霊と悪疫退散を願い,花火を盛大に打ち揚げたことにはじまったといわれている。花火の心理学的研究として,花火に対する印象評価語(感動,力強さ,爽快感,美的感覚)と花火の構成要素(色,光,形,音)が個別に関連を持っているかを探るために実験場面を設定した印象評価実験が行われている。また,花火大会はストレス解消の場としての効用も考えられている。花火による健康障害には,熱傷や創傷の他に,花火の煙による気管支喘息,好酸性肺炎が報告されている。花火師の職業病に関する研究は,少数の花火師を対象にした報告があるにすぎない。その報告によれば,主な自覚症状の有訴率は,難聴50.0%,腰痛40.0%,耳鳴り30.0%,視力低下30.0%であった。症状は10年から20年位で出現していた。また,花火師が実際に受けている音圧の平均値は128.9dBと推定された。打ち揚げ地点から15m離れた地点での粉じんの質量濃度(mg/m^3)の平均値は0.992であり,日常の43.6〜47.2倍であった。今後,花火師のメンタルヘルスや夏期に特に重要となる熱中症予防の観点からの取り組みが期待される。