- 著者
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飯田 直樹
- 出版者
- 社会政策学会
- 雑誌
- 社会政策 (ISSN:18831850)
- 巻号頁・発行日
- vol.4, no.1, pp.135-146, 2012-06-10
近年の社会事業史研究の特徴の一つは,社会事業をめぐる言説があたかも社会事業を創出する直接の要因であるかのような前提のもとに,言説分析に力点が置かれてしまっているところにある。この論文は,言説分析よりも社会事業そのものの実態分析を重視するという立場から,大阪府方面委員制度創設の歴史的意義を検討したものである。この論文では,同制度創設以前に実施された大阪府警察による社会事業に注目し,警察社会事業と方面委員制度との比較分析を行った。警察社会事業は,事業対象者に対して一律に貯金強制を行うなど,貧困事情の個別性に対応できないという限界を有していた。大阪府方面委員制度は,この限界を克服するという面を持っていた。官僚的・画一的・強制的な取締を本質とする警察社会事業と対比して表現するならば,この制度は,「不定形・情緒的・個別的な働きかけ」と特徴づけられる,新しい社会事業なのであった。