- 著者
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橋元 良明
- 出版者
- 一般社団法人 社会情報学会
- 雑誌
- 社会情報学 (ISSN:21872775)
- 巻号頁・発行日
- vol.1, no.1, pp.47-53, 2012
本稿では,まずsociologieという言葉が,日本での通説とは異なり,フランスの革命指導者シエイエス(Emmanuel Joseph Sieyes)がその手記でしたためたのが最初であることを述べた。そこには市民革命前夜の新しい社会秩序成立への期待があった。その後,オーギュスト・コント(Auguste Comte)が改めてsociologieという言葉を使用し,産業革命後の社会再編も伴って,学問としての「社会学(Sociology)」の展開が始まるが,その中から,研究対象の分化という形で「社会心理学(Social Psychology)」が発展する様子を概説した。最後の節では,「社会情報学」が,「社会心理学」などとは異なり,大学の組織論的要請から生まれた言葉であり,研究領域にちなんで学術的発展の必然から生まれた語ではないことを述べた。すなわち,東京大学新聞研究所の学部転換構想や,札幌学院大学における新学部設置をめぐって「社会情報学」という言葉が作り出されたという特殊な出自をもっ学問領域名であった。