著者
山田 浩之
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.86, pp.59-74, 2010-06-30

本稿は,小説,映画,マンガなどに描かれる教師像を「熱血教師」を手がかりとして分析することで,教師への錯綜するまなざしを明らかにすることにある。「熱血教師」は現在のテレビドラマなどに見られる画一的な教師像であるが,これは現在も教師への信頼が強いことを示す。その一方で,メディアでは教師への批判が数多く報道されている。本稿ではこうした教師への信頼と不信の錯綜したまなざしと教師像の変化を検討した。「熱血教師」は1960年代に石原慎太郎『青春とはなんだ』で提出された教師像であった。その特徴は,教育への情熱,教師らしさの無さ,理想的人間像の他教師と生徒の関わりに物語の重点が置かれていること,さらに児童生徒の私的領域に押し入ってまでの問題解決であった。こうした教師像は,日本の現実の教師の行為を反映したものでもあった。その一方で,1980年以降マンガの中では児童生徒の私的領域に関わらない不良教師が描かれるようになった。このことは,現実の社会でも教師が児童生徒の私的領域に関われなくなったことを示している。それにもかかわらず教師には「熱血教師」として,なおも児童生徒の私的領域に関わることが求められている。以上の議論をもとに,教師に対するまなざしを多様化し,個々の教師の多様性に着目することの重要性を指摘した。

言及状況

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家島明彦,2014,「マンガ・アニメに描かれる教師像――子どもに好かれる人気教師の特徴とは」『児童心理』2014年5月号,41-45. (最新号です) 山田浩之『マンガが語る教師像』(昭和堂、2004)を参照しつつ、各年代ごとに、特徴的な教師キャラクターの登場するマンガを紹介しています。そのうえで、以下のように分析しています。 「マンガ・アニメに登場する教師は(中略)尊敬や畏怖の対象となる人物 ...

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こんな論文どうですか? 信頼と不信 : 錯綜する教師へのまなざし(<特集>ゆらぐ教員世界と教職の現在)(山田 浩之),2010 https://t.co/SRyf289ctx

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