- 著者
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立花 希一
- 出版者
- 秋田大学
- 雑誌
- 秋田大学教育文化学部研究紀要. 人文科学・社会科学 (ISSN:1348527X)
- 巻号頁・発行日
- vol.68, pp.103-118, 2013-03-31
19世紀における科学と宗教の衝突は,もはや取って代わられたように私には思われる。「無批判的な」合理主義は矛盾しているので,科学と宗教の衝突の問題は,知識(knowledge)と信仰(faith)との間の選択ではありえず,ただ単に二種類の信仰の間の選択にすぎない。こうして生まれた新たな問題は.どちらが正しい信仰なのか,どちらが誤った信仰なのかである。私が明らかにしようと試みたことは,われわれが直面している選択は,理性に対する信仰(faith in reason)および人間性を備えた個々人に対する信仰と,人間を集団に統合する人間の神秘的諸能力に対する信仰との間に存するということである。そしてこの選択は同時に,人類の統一を承認する態度と,人間を友と敵,主人と奴隷とに分断する態度との間の選択でもある。私が言いたいのはただ,〔宗教と科学の衝突の〕問題がもはや存在しないこと,あるいは,この問題は,とにかく,われわれが直面している全体主義や人種主義といった邪悪な宗教(evil religions)の問題と比べれば些細なものであることを,われわれは今ではすっかり学んだということである。I had written a paper in 1989 entitled ''Karl Popper on Christianity". It was renamed ''Karl Popper's Views on Religion: Judaism, Christianity, and Critical Rationalism" and published in 2001 in the collection of papers entitled Critical Rationalism, vol. 1, edited by the Japan Popper Society. At that time I was unaware of any publications by Popper whose main theme was religion, and I had based my position on sporadic remarks made by Popper in his various writings. However, in light of the 2008 publication of a collection of papers by Popper (After the Open Society: Selected Social and Political Writtings, eds. Jeremy Shearmur and Piers Norris Turner), which includes Popper's papers on religion (e.g., "Science and Religion"), I present a reappraisal of Popper's views on religion.