- 著者
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平塚 徹
- 出版者
- 京都産業大学
- 雑誌
- 京都産業大学論集. 人文科学系列 (ISSN:02879727)
- 巻号頁・発行日
- vol.46, pp.281-298, 2013-03
日本語の形容詞「近い」は,「X はY に近い」と「X はY から近い」の二つの構文を取る。 これに対して,反意語の「遠い」は,「X はY から遠い」という構文をとり,「X はY に遠い」 とは現代の通常の慣用では言わない。これらの構文を説明するために,以下の仮説を提案す る。【仮説1】「X はY に近い」という場合,X とY の間の距離が小さいという事態を,X が Y に接近するという認知的表示によって概念化している。【仮説2】「X はY から{近い/遠い}」 という場合には,認知的表示においてY からX まで仮想的な移動体が移動している。これら の仮説から例えば以下のようなデータが説明される。(a)海岸は僕の家{?に/から}近い。(b) 私たちはもうゴール{に/?から}近い。(c)ここ{? に/から}ゴールは近い。(d)正午{に / ? から}近い。(e)味はチーズ{に/ ? から}近い。