著者
寺田 剛
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.18-26, 2013-04-15

Sugiura and Yamazaki(2004)のStathmopoda属の1未同定種とこれに近縁であると考えられる種について検討し,S. aprica種群を認めた.また,このグループに含まれる1新種イヌビワマイコガ(新称)(S. fusciumeraris n. sp.)と日本新記録種ヒメイヌビワマイコガ(新称)(S. aprica Meyrick,1913)について記載および再記載を行った.両種は外見的特徴が互いに似ているため,成虫の外見的特徴,翅脈,雌雄交尾器を図示し,比較した.両種は外見的には胸部や前翅の斑紋で識別できる.また,ヒメイヌビワマイコガはKasy(1973)においてS. astricta Meyrick,1913と同種である可能性が指摘されているため,この2種についても外見的特徴,雄交尾器について比較を行った.その結果,両種は別種であると考えられた.ヒメイヌビワマイコガの寄主植物は未知だが,イヌビワマイコガはイヌビワ属3種を寄主植物とし,S. aprica種群の構成種の既知の寄主植物はすべてイヌビワ属である.Stathmopoda aprica種群 前翅は細く,R_1脈とCuA脈を欠く.雄の膜質の腹部第8節に発香総が発達し,交尾器のテグメンにペニキュリが発達する.雌交尾器のコルプス・ブルサエは2つのシグヌムを持ち,その内1つは2又となっている.本種群にはS. aprica Myerick,1913,S. crassella Walsingham,1891,S. astricta Meyrick,1913,S. ignominiosa Meyrick,1913,S. sycophaga Meyrick,1913,S. sycastis Meyrick,1917,S. ficivora Kasy,1973,S. ficipastica Bradley,1974,S. fusciumeraris n. sp.の9種が含まれる.1.Stathmopoda fusciumeraris n. sp.イヌビワマイコガ(Figs,1, 4, 6-10) 開帳12.7-19.2mm.前翅長6.0-9.3mm.胸部は黄色であり,前胸両側端に暗褐色,中胸中央後端に褐色の斑紋を持つ.前翅は黄色で,前縁は褐色.基部,2/5,3/4に褐色帯が走る.雄交尾器のエデアグスにはコルヌツスを持つ.雌交尾器のコルプス・ブルサエのブラとの接点付近に少数の小骨片を持つ.幼虫は寄主植物の隠花果に潜り,その内部や種子を摂食する.成虫は1-7,9-12月に発生する.本種はSugiura and Yamazaki(2004)によってStathmopoda sp.として扱われた種と同種である.分布:徳之島,沖縄本島,石垣島,西表島,与那国島;台湾.寄主植物:オオバイヌビワ,コウトウイヌビワ,ギランイヌビワ(クワ科).2.Stathmopoda aprica Meyrick,1913 ヒメイヌビワマイコガ(Figs 2, 5, 11-15) 開帳8.5-13.0mm.前翅長4.0-6.2mm.前種に似るが,前胸には斑紋が無く,中胸に黒褐色条が走る.前翅は橙色であり,前縁,基部,3/8,7/10に褐色帯が走る.前縁の条は太く,先端が2又となっている.雄交尾器のエデアグスにはコルヌツスを欠く.雌交尾器のコルプス・ブルサエに多数の骨片を持つ.本種はKasy(1973)においてS. astrictaと同種である可能性が指摘されていたが,頭部背面の色彩,雄交尾器のウンクス,グナトス,エデアグス先端の硬化部の大きさ,把握器基部のテグメンとの接点付近の太さによって識別でき,別種であることが確認された.成虫は2-3,5,7-10,12月に発生する.分布:屋久島,奄美大島,沖縄本島,石垣島,西表島,与那国島;スリランカ.寄主植物:不明.

言及状況

Twitter (5 users, 5 posts, 0 favorites)

ヒメイヌビワマイコガというのもいるようで。 https://t.co/lxztdgPymP
1 1 https://t.co/mc5uEUAyKJ https://t.co/G3BI6A9W4E

収集済み URL リスト