著者
寺澤 浩樹
出版者
文教大学
雑誌
文学部紀要 (ISSN:09145729)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.146-131, 2012-09-29

武者小路実篤の中期(大3〜6)作品群において、素材を同じくする戯曲「罪なき罪」(大3・3)と小説「不幸な男」(大6・5)の二作品は、他の諸作品を挟む時期に位置する。その中には、小説「彼が三十の時」(大3・10〜11)、戯曲「その妹」(大4・3)、戯曲「ある青年の夢」(大5・3〜11)など、戦争への作者の関心が反映された著名な作品が多く、この中期が「ヒューマニズムの時代」と呼ばれるゆえんである。しかし、小説「不幸な男」の特質として、戯曲「罪なき罪」から小説「不幸な男」への変容の根底には、〈死のリアルな表現〉の意図であること、その素材のデフォルメの意図には、モデルの〈苦境と苦悩の明確化〉があること、その主題は、〈神ならざる凡人には重すぎた運命〉であり、その情調は、〈厳粛な暗澹たる悲哀〉であることなどから、小説「不幸な男」という視座からは、この中期には、〈死の認識〉のモチーフが明瞭に見える。それが、「非戦」的と言われる諸作品を芸術として成立させる礎であり、武者小路独自の運命の観照なのである。

言及状況

Twitter (2 users, 2 posts, 1 favorites)

こんなアカウントが笠間書院にあったとは。国語国文 無料公開 論文紹介。 RT @kasamashoinRS 寺澤 浩樹 -  武者小路実篤中期作品の問題点 : 小説「不幸な男」を視座として http://t.co/FJM9seuh #CiNii
寺澤 浩樹 -  武者小路実篤中期作品の問題点 : 小説「不幸な男」を視座として http://t.co/OlqaxSNZ #CiNii

収集済み URL リスト