- 著者
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山口 一郎
寺田 宙
欅田 尚樹
高橋 邦彦
- 出版者
- 国立保健医療科学院
- 雑誌
- 保健医療科学 (ISSN:13476459)
- 巻号頁・発行日
- vol.62, pp.138-143, 2013-04
東京電力福島第一原子力発電所事故により,食品の放射線安全への懸念が国内外で高まり,そのために様々な対策が講じられた.対策の成果を評価するために,食品に由来した線量の推計が様々な方法により試みられている.ここでは,厚生労働省が公表している食品中の放射性物質のモニタリング結果に基づく線量推計例を示す.なお,事故直後から6ヶ月間の被ばく線量の評価例は,2011年10月31日に薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会放射性物質対策部会で報告されている.本稿では,その評価例に引き続くものとして,事故直後から2012年12月までの実効線量と甲状腺の等価線量を積算した評価例を示す.年齢階級別に東電福島原発事故後の食品中の放射性セシウムと放射性ヨウ素に由来した預託実効線量を推計した結果,中央値が最も高かったのは13-18歳で2012年12月20日までの積算で0.19mSvであった.95%タイル値が最も高かったのは1-6歳で0.33mSvであった.このような食品からの線量の事後的な推計は,ある集団や個人の放射線リスクの推計や放射線防護対策の評価に役立てることができる.また,今後の食品のリスク管理のあり方の検討にも役立てることができるだろう.