- 著者
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竹内 真人
- 出版者
- 社会経済史学会
- 雑誌
- 社會經濟史學 (ISSN:00380113)
- 巻号頁・発行日
- vol.80, no.4, pp.491-506, 2015-02-25
本稿は,18世紀末以降のイギリス自由主義的帝国主義を肯定的に評価する「ウィッグ史観」に基づく研究とは異なり,イギリス自由主義的帝国主義を批判的に分析することを目的としている。福音主義は,1730年代以降の英米の「福音復興運動」によって拡大した禁欲的プロテスタンティズムのことであり,社会を「有機体」と捉える「ジェントルマン理念」(すなわち高教会主義と広教会主義)とは対立していた。この福音主義は,人間を機械化・生産力化するイデオロギー的意味作用を持つものであり,近代的宣教運動に裏づけられたイギリス自由主義的帝国主義を生みだすことになった。本稿は,福音主義とイギリス自由主義的帝国主義の関係を重視し,ジェントルマン・エリートが自由主義的政策転換を行った原因が福音主義イデオロギーにあったことを明らかにする。イギリスの自由主義的帝国主義を理解するには,「ジェントルマン理念」と並んで,福音主義の伝道者的使命感を重視すべきであり,その自由主義的介入は,際限なき営利欲を抑制し,資本と労働の調整を目的とするものでもあった。