- 著者
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根村 直美
- 出版者
- 教育思想史学会
- 雑誌
- 近代教育フォーラム (ISSN:09196560)
- 巻号頁・発行日
- no.18, pp.73-81, 2009-09-12
現在、社会構築主義の立場から「抑圧」を問題化する諸理論は、非対称的で二項対立的なカテゴリーを設定することによるアポリアを避けて通ることできなくなっており、その乗り越えが大きな課題となっている。そうした状況の中、現実の教育実践を手がかりに、社会構築主義の立場から「抑圧」を問題化する障害者解放理論が直面するアポリアを乗り越えるための理論的地平を提示しようとしている森岡氏の試みの意義は大きい。そこで、本稿においては、森岡氏の提示する理論的地平、特に、その鍵概念「他者への欲望」を検討し、氏の理論的考察の今後の課題を明らかにすることを試みた。具体的には、「他者への欲望」を鍵概念とする理論的地平が果たして二項図式に直接的に切り込んでそれを「無効化」するような枠組みたりえるのか、また、現実の教育関係をモデルにしたその分析の視点が教育者の側に終始してしまっているのではないかという点について指摘した。