著者
田中 拓道
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.17-28, 2015-03-30

本稿では,フランスの社会政策を基礎づける規範的言説の歴史を検討し,二つの特徴を指摘する。第一は,フランス革命期の政治的秩序像によって,個人が伝統集団から析出され,国家と個人という二極構造が作られた点である。伝統集団から析出された個人の脆弱さが意識されてはじめて,工業化の下で生じる貧困が「社会問題」と認識された。第二に,フランスの社会政策は国家による公的扶助の拡張ではなく,「社会的」相互依存の中での個人の権利・義務関係から導かれた。そこでは社会の目的を問いなおす「自由検討の精神」の拡張と,産業社会への個人の統合という目的との緊張関係が内在していた。1980年代以降の改革では,「自由選択」の拡張という理念が浮上する。経済発展という目的に「社会的なもの」を従属させず,労働・家族・コミュニティ・文化・政治活動への参画の「自由選択」を保障するという点に,現代フランス社会政策の思想的な特徴が見いだせる。

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CiNii 論文 -  フランスの社会政策思想と現代(<特集>社会改革思想と現代-社会政策の思想的基盤を問う) https://t.co/sRfN9s5qYw #CiNii
CiNii 論文 -  田中拓道「フランスの社会政策思想と現代(<特集>社会改革思想と現代-社会政策の思想的基盤を問う)」 https://t.co/SiT9GgXNZv #CiNii 2015年3月刊行だからあと少し待てば読めるようになる!学会誌電子化まで2年は国外勢に厳しい。

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