著者
戸次 加奈江 稲葉 洋平 内山 茂久 欅田 尚樹
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 = Journal of the National Institute of Public Health (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.460-468, 2015-10

2005年,世界保健機関(WHO)はたばこの規制に関する世界保健機関枠組条約(WHO Framework Convention on Tobacco Control; WHO FCTC)を発効し,本条約により締約国は,たばこ消費の削減に向けた広告・販売への規制や密輸対策をはじめ,たばこによる健康被害防止のためのヘルスコミュニケーションの実施が要求されている.「第11条:たばこ製品の包装及びラベル」では,締約国に対して,喫煙を主な要因とする疾病の警告表示の義務付けや,各国でのたばこ政策の実施へ向けた国内法制定のための実践的な支援対策としてMPOWER政策が提示されている.こうしたFCTCの発効により,各国でのたばこ対策は飛躍的に進められ,2010年には,画像警告ラベルの表示を実施する国が34ヶ国であったのに対し,2015年には77 ヶ国までにも増加し,その他,禁煙者の増加を目的に実施される,包装上に禁煙電話相談サービス(クイットライン)の連絡先を表示する対策や,たばこ製品特有の色使い・画像・マークなどの使用が禁じられた「プレーンパッケージ」の導入により,オーストラリアでは喫煙率が2010年から2013年の間に15.1%から12.8%に減少するなど,たばこ対策の実施による着実な効果が伺える.一方,日本国内の喫煙率は,今現在も他の先進国と比較して非常に高い水準にあり,喫煙による有害性が社会的にも広く認識されているアメリカやカナダ等の先進国と比較すると大きな差が生じている.また,日本国内では,FCTCに対応すべく「たばこ事業法施行規則」による警告表示,規制が定められているものの,それらはFCTCで求められる最低限の条件を満たすのみである.この様に,他国と比べてもFTCT第11条に関連した日本国内のたばこ対策は大きな遅れを取っている状況にある.これらのことから,今後,わが国のFCTCに基づいたたばこ対策による喫煙率低下へ向けた効果,また社会的影響等について国際的なたばこ対策の動向を踏まえた総合的な見直しを行い,将来的なたばこ対策全体の方向性を示す必要がある.

言及状況

Twitter (1 users, 1 posts, 0 favorites)

こんな論文どうですか? FCTC第11条 : たばこ製品の包装及びラベル上の警告表示に関する国際的動向 (特集 たばこ規制枠組み条約に基づいたたばこ対策の推進)(戸次 加奈江ほか),2015 https://t.co/RTpMy1VO6t 2005…

収集済み URL リスト