- 著者
-
田川 佳代子
- 出版者
- 一般社団法人 日本社会福祉学会
- 雑誌
- 社会福祉学 (ISSN:09110232)
- 巻号頁・発行日
- vol.56, no.2, pp.1-12, 2018-07-20
社会正義の思想は,正義の諸概念や諸構想に依拠する.どのような正義の構想に依拠するかを曖昧にすることは,実現しようとする正義を玉虫色のものにする.ソーシャルワークが擁護すべき社会正義とは何か.ソーシャルワークにおいて実現しようとする正義は何であるか.社会正義の広範な理論の検討を踏まえ,議論の輪郭を描くことが課題である.本稿では,まず,広範囲に及ぶ社会正義の意昧について調べる.配分的正義の議論を乗り越え,現代のソーシャルワークに要請されている抑圧や文配を除去し,搾取や社会的不正義を克服するのにふさわしい,ソーシャルワークにおける社会正義の諸概念や諸構想を検討する.ポスト近代,ケアの倫理,反抑圧といった新たな社会理論からの異議申し立てを,ソーシャルワークはどう受け止めるのか.ソーシャルワークの理論的変遷を辿りつつ,考察を試みる.