- 著者
-
隋 藝
- 出版者
- 一般社団法人中国研究所
- 雑誌
- 中国研究月報 (ISSN:09104348)
- 巻号頁・発行日
- vol.69, no.11, pp.1-21, 2015-11-25
1948年11月から1950年10月にかけて,遼寧省における反共産党勢力の取り締まりなどの大衆工作は,従来の階級闘争の形では展開せず,中国共産党の公安部門がリードし,反対勢力を排除したのちに民衆に対する宣伝を行う構造となった。こうした従来の共産革命と離れた大衆工作は,闘争による社会の混乱を避けたが,革命原理に基づいた大衆運動からのエネルギーの獲得や,古い社会関係の打破と新たな階級関係の再編も容易にはできなくなり,民衆に対する中共のイデオロギー操作も一層難しくなった。本稿では,遼寧省の瀋陽市を中心に大衆工作を検討して,中共による平時建設のための都市社会の再編と革命原理の矛盾を浮き彫りにする。