- 著者
-
渡辺 昭一
- 出版者
- 社会経済史学会
- 雑誌
- 社會經濟史學 (ISSN:00380113)
- 巻号頁・発行日
- vol.81, no.3, pp.303-321, 2015-11-25
1957年ころ,インドは,開発援助の支柱であったスクーリング・バランスの激減により,五ヵ年計画が頓挫する危機的状況に陥った。世界銀行は,新たな援助システムとしてインド援助コンソーシアムを結成した。本論文は,1960年代のインド援助コンソーシアムとの関連で,イギリスの対インド政策の展開過程を検討することを目的とした。コンソーシアムのもとで1960年代のイギリスの対インド援助は,輸出信用保証局によって行われた。同局は,1957年以降イギリス輸出業者に対する保険を担保する権限とともに貸付権限をも付与された。イギリスは,この制度によって多額の援助を実施し,しかも1960年代半ば頃よりプロジェクト援助からノン・プロジェクト援助へと変化させた。1960年代後半にインドが債務返済に窮した際に,イギリスは,世界銀行を通じて自らの援助方法を他のドナー諸国に適応を促した。イギリスは,キッピング・ローンや維持目的の援助(一般目的)を拡大することによって対インド輸出権益の保持拡大を狙っていたのである。