著者
磯野 直秀
出版者
慶應義塾大学日吉紀要刊行委員会
雑誌
慶応義塾大学日吉紀要 自然科学 (ISSN:09117237)
巻号頁・発行日
no.34, pp.9-21, 2003

原著論文慶長8年(1603)年に本編,翌年に補遺編が長崎で出版されたイエズス会宣教師編『日葡にっぽ辞書』は,3万2千語を収録し,当時の和語を知るための第一級資料である。たとえば,『野菜の日本史』は,『邦訳日葡辞書』を利用して当時の呼称とともに,新たにヨーロッパ人が持ち込んだ数々の野菜を明らかにしている。このような試みは動植物全般に有用であろう。そこで,今回は動物を対象として『邦訳日葡辞書索引』から該当する語を収録,『邦訳日葡辞書』の語釈と解説によって検討・整理した。その上で江戸時代の分類に従って「獣類・禽類・魚類・介類・虫類」の5類に大別し,五十音順に配列したのが次に示すリスト(種名か類名)である。このリストにおいては①広く使われている和語を中心として収録した。たとえば,オシドリについては「おしどり」を選び,「鴛鴦おしどり」の音読み「えんおう」は拾わなかった。また,「獣」・「鳥」などの総称や,想像上の鳥獣名,詩歌語(いなおおせどり=稲負鳥など),婦人語(あかおまな=サケなど)は原則として収録していない。②平仮名の品名は,『日葡辞書』にローマ字綴り方で表記されている和語を,『邦訳日葡辞書』で現代表記の仮名書きに直したものである(リスト以外も同じ)。なお,「魚」の「うお」は口語で「いお」となることがあり,両方の表記が用いられている。③( )内は注釈で,片仮名は現和名(平仮名と同じときは原則として省略),「」を付したのは原注の『邦訳日葡辞書』訳を簡略化したものである。また,獣類の「ちす」のようにその獣が現在の何に当たるか見当がつかない場合や,「あおばい」に対する「キンバエ」のように種名や類名を断定しかねる場合は,「?」を付した。必要に応じて,相当する漢字表記や類名を加え,読みやすいように平仮名に下線を付した場合もある。長文の注釈を要するときは,「*」を付し,注記としてリストの末尾にまとめた。④「あおがえる」「あおがいる」など発音上の小差にすぎない語や,「あこや」「あこやのかい」などの類縁語は,一般的と思われる語を先に置き,「・」を用いて併記した。⑤見出し名や現和名には種名と類名が混じているが,大半は「‥‥類」の表示を省いた。⑥初出と思われる語には,波線を加えた。⑦現和名の推定には江戸時代初頭の辞書・用語集・本草書のほか,鳥名は『日本鳥名由来辞典』,魚名は『日本魚名集覧』,貝名は『日本貝類方言集』,それ以外の動物や全般的な検討には『日本国語大辞典』を参照した。

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こんな論文どうですか? 『日葡辞書』の動物名(磯野 直秀),2003 https://t.co/6H5eLryJUw 慶長8年(1603)年に本編,翌年に補遺編が長崎で出版されたイエズス会宣教師編『日葡にっぽ辞書』は,3万2千語を収録し,当時の和語…
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こんな論文どうですか? 『日葡辞書』の動物名(磯野 直秀),2003 https://t.co/R2LUuGt3e7 原著論文慶長8年(1603)年に本編,翌年に補遺編が長崎で出版されたイエズス会宣教師編『日葡にっぽ辞書』は,…
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オススメ。楽しい。「『日葡辞書』の動物名」 http://t.co/U9z8eH9
@yukufumu ゴキブリの名称の変遷について,なにやらドンピシャな論文が(最後のほうです)。 http://ci.nii.ac.jp/naid/120000801273 本草には,年中人家にいるとは書かれてないんですね。摂取すると何かに効くのでしょうか。

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