著者
末永 斂 黒川 憲次 和田 義人
出版者
長崎大学熱帯医学研究所
雑誌
熱帯医学 Tropical medicine (ISSN:03855643)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.47-54, 1987-03-31

多系統の蚊を累代飼育する場合,なるべく手間のかかならい飼育法の開発が望まれる.蚊成虫の飼育には通常,砂糖水を脱脂綿に含ませて栄養として与えているが,その場合,1~数日置きに新しいものと交換するか,新しい砂糖水を補充しなければならない.われわれは市販の角砂糖と汲み置きの水道水とを別々の容器に入れて与え,成虫を飼育することに成功した.飼育に使用するケージは大きさが200×200×300mmの針金枠にテトロンゴース製の袋をかぶせたもので,このケージを230×320×2mmの塩化ビニール板の上に載せて使用する.このケージ1個で飼育できる成虫数は約1,000個体以内である.ケージの内部には水道水を満たした90mlのプラスチックコップと角砂糖2~3個(蚊の個体数による)を載せた同コップの蓋をそう入する.成虫はコップの水を飲み,角砂糖をだ液で液かして摂取することにより, 2~3週間放置しても健康な状態で生存し,その後でもマウスから吸血し,産卵する.蚊の生存率,吸血率,産卵率,及び卵の孵化率は羽化して約1週間後から多少低下するが,次世代を得るのに支障はない.飼育室内は温度約25℃,湿度約70%,薄明・薄暮を含む長日照明の状態に保つことが望ましい.湿度が高すぎると角砂糖が溶け出し,また低すぎるとコップの水が早くなくなるので共に避けなければならない。出張などで10日間以上放置する場合には,角砂糖を更新し,水の量を多くする.角砂糖の表面が甚だしく汚れた場合には,表面をナイフの縁などで削り落して新しい面を出すことにより再使用できる.われわれはこの方法で,アカイエカ群の数系統の蚊を6年以上にわたり累代飼育している.Although the soaked cotton pad method seems to be the most commonly used technique for providing the sugar solution for adult mosquitoes, the cotton pad must be exchanged with a fresh one at an appropriate interval. For this reason, we examined the cube sugar technique to save us the trouble of handling mosquitoes in the laboratory for rearing several mosquitoes, Culex pipiens complex, Aedes togoi and Armigeres subalbatus. The results showed that this technique seems to be very useful to rear the adult mosquitoes, though the blood feeding rate in cube sugar group was slightly lower than that in 1-5% sugar solution groups. We are maintaining several strains of Cx. pipiens complex successfully by using this technique over 6 years.

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