- 著者
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太田 伸広
Ohta Nobuhiro
- 出版者
- 三重大学人文学部文化学科
- 雑誌
- 人文論叢 (ISSN:02897253)
- 巻号頁・発行日
- no.26, pp.41-73, 2009
一方的恋愛結婚は、柏手の意思を確認せず、一方的な恋愛感情で相手をもらう結婚である。一方的恋愛結婚の特徴の一つは、一方的に惚れ、結婚しようとする者は、社会的地位、身分が相手より上で、しかも男性だということである。もう一つは、一方的恋愛結婚は相手の意思、考え、感情などを無視した結婚であるにもかかわらず、実際にはそれが苦難、困窮、いじめ、迫害からの主人公の救済になっていることである。そしていじめたり、迫害した者は悲惨な罰を受けることが多い。次は、グリム童話と『日本の昔ばなし』の相違点である。前者では、家の干渉などまったくなく、惚れて結婚しようとする者が自分の思いをはっきりと打ち明けて結婚するが、後者では、一方的に惚れて結婚しようとするほどに積極的な気持ち、愛情があるのに、自らの思いを相手に打ち明けない話が半数近くもある。親任せ、家任せなのである。グリム童話では主人公はほとんど全員が外見の美しさに惚れるが、『日本の昔ばなし』では主人公の多くが内面の美しさに惚れる。