- 著者
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松山 宏
- 出版者
- 奈良大学史学会
- 雑誌
- 奈良史学 (ISSN:02894874)
- 巻号頁・発行日
- no.2, pp.1-20, 1984-12
中世城下は一般によく分っていないし、研究も少ない。しかし地方武士権力の実態をつかむために、その拠点を明らかにすることは必要である。現在のところ私が把握している城下は、戦国以前の中世を通じ一国一つ程度であり、それもほとんどは守護のそれである。ところがそのなかで信濃国は異例であり、鎌倉・南北朝・室町の各時代においてそれぞれ複数の城下が存在している。しかもそれには守護を含む地頭・国人層のものもみえるのである。もっとも厳密にいってこれらが真に城下といえるかとなると疑問のもたれるのもあり、また城下が備えている政治・宗教・商業・交通などの諸機能がすべて明らかだともいえない。だが他国での守護城下にみあうものが、ここでは地頭・国人などの城館地にもみられる。信濃国に城下が多いのは、一つには史料によるが今一つは現在の長野県の各地域での豊かな調査・研究のためである。いずれにせよこれらの城下を、地元の諸成果をふまえて明らかにしたいと考える。