著者
島崎 由美 渡邊 好昭 関 昌子 松山 宏美 平沢 正
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.85, no.3, pp.294-301, 2016-07-05 (Released:2016-07-26)
参考文献数
24
被引用文献数
3

水田で栽培されたコムギ (水田のコムギ) は,畑で栽培されたコムギ (畑のコムギ) に比べ製パン性が劣ることが知られている.その主な要因は,小麦粉のタンパク質含有率が畑のコムギに比べ水田のコムギで低いことにあると考えられている.小麦粉のタンパク質含有率は,開花期に窒素を追肥することで高められる.そこで本研究では,開花期窒素追肥により水田のコムギの小麦粉タンパク質含有率を高めることが,製パン性に及ぼす影響を調査した.その結果,開花期に窒素を8 g m-2追肥することで,水田のコムギの小麦粉タンパク質含有率を畑と同程度の13%にまで高めることができた.しかし,製パン性を評価するバロリメーターバリュー (VV) は,畑のコムギでは75以上あったのに対して水田のコムギでは60程度と低かった.水田のコムギは畑のコムギに比べて吸水率が高く,小麦粉タンパク質含有率が13%と高いときは,生地形成時間 (DT) が短かった.パンの柔らかさを示すコンプレッションは水田のコムギの方が畑より小さく,パンは柔らかかった.小麦粉タンパク質中のSDS可溶性モノマー画分 (EMP) に対するSDS不溶性ポリマー画分 (UPP) の比は,水田のコムギで畑より有意に小さかった.なお,水田のコムギは,開花期に窒素8 g m-2を追肥して子実タンパク質含有率を高めても,原粒灰分が高く,容積重が小さいために,ランク区分はBやCだった.一方,畑のコムギは開花期に窒素を追肥しなくてもランク区分はAであった.
著者
松山 宏
出版者
奈良大学史学会
雑誌
奈良史学 (ISSN:02894874)
巻号頁・発行日
no.2, pp.1-20, 1984-12

中世城下は一般によく分っていないし、研究も少ない。しかし地方武士権力の実態をつかむために、その拠点を明らかにすることは必要である。現在のところ私が把握している城下は、戦国以前の中世を通じ一国一つ程度であり、それもほとんどは守護のそれである。ところがそのなかで信濃国は異例であり、鎌倉・南北朝・室町の各時代においてそれぞれ複数の城下が存在している。しかもそれには守護を含む地頭・国人層のものもみえるのである。もっとも厳密にいってこれらが真に城下といえるかとなると疑問のもたれるのもあり、また城下が備えている政治・宗教・商業・交通などの諸機能がすべて明らかだともいえない。だが他国での守護城下にみあうものが、ここでは地頭・国人などの城館地にもみられる。信濃国に城下が多いのは、一つには史料によるが今一つは現在の長野県の各地域での豊かな調査・研究のためである。いずれにせよこれらの城下を、地元の諸成果をふまえて明らかにしたいと考える。
著者
黒崎 順二 園田 立信 小野 茂 松山 宏 山中 将弘
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.324-329, 1982-10-28
被引用文献数
4

牛を高温環境で放牧する場合の管理法を究明する一環として,高温時における放牧行動の実態並びに高温時の放牧と呼吸数との関係を調査した。調査には宮崎大学住吉牧場のホルスタイン種の搾乳牛を用い,草地はバヒアグラスの優占草地で,10時30分から16時30分まで放牧し,調査を行なった。主要な調査結果は以下のとおりであった。1.6月下旬,7月および8月には,気温がそれぞれ27.0〜30.5℃,31.5〜35.0℃および29.5〜31.0℃の高温となり,このため牛は牧草地における採食と庇蔭林内における休息とを頻繁に繰り返し,放牧時間内における採食時間の割合が非常に少なくなった。これに対し,6月上旬,9月および10月の気温は,それぞれ24.5〜27.0℃,24.5〜27.0℃および21.0〜26.0℃で,採食と休息との繰り返しはほとんどみられず,また放牧時間の大部分が採食時間で占められるなど,高温時とは著しく異なった行動を示した。2.休息時の呼吸数は高温時期の6月下旬,7月および8月が6月上旬および9月よりも多くなり,10月はそれらよりも少なかった。その高温時には休息時間の経過に伴って呼吸数が著しく少なくなった。また,採食から休息に変るときは呼吸数が増加し,休息から採食に変るときは減少していたが,それらの呼吸数の変異は大きく,一定していなかった。このことは呼吸数自体が採食を阻害していないことを示す例証と考えられた。採食中の呼吸数は,季節的および個体的差異がみられるが,同一季節で同一個体の呼吸数はほぼ一定で大きくは変動しなかった。