著者
広田 康生
出版者
専修大学人間科学学会
雑誌
専修人間科学論集. 社会学篇 (ISSN:21863156)
巻号頁・発行日
no.1, pp.145-155, 2011-03

本稿の目的は、日本の「共生」論の意味と現在の研究地平について、初期シカゴ学派の同化論=編入(incorporation)論との関連で再考することにある。「共生」論は、特に都市社会学ないし都市コミュニティ論が、マイグレーションの磁場=結節点として注目された日本の地域社会における多文化化・多民族化に関する研究の過程の早い段階で取り組みながら、その研究の意味に関する議論が十分に深められてこなかった研究領域である。だが、日本社会の「共生」論は、アメリカの多文化主義や新同化論そしてその思想的原点である初期シカゴ学派の「同化」論を参照点としてみると、「市民的ナショナリズム」による「人種的ナショナリズム」の克服を目指す「編入」論=「統合」論とは、「エスニシティ」概念使用の仕方や差異への取り組み方をめぐるオルタナティブな思想を持つ。「共生」論に焦点を合わせることで我々は、多文化化や多民族化の中を生きる日本人の特徴や、日本社会の特徴を考えることができるし、今後の在り方を知る手掛かりになる。本稿では、日本社会において問題にされてきた「共生」とは何だったのか、それは今後どのような方向性において展開していくのか、それを考えるということはどういうことなのかについて、新同化論の原点である初期シカゴ学派の「エスニシティ研究」の論理と相互参照させながら見ていきたい。

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