著者
倉本 香
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. 1, 人文科学 (ISSN:03893448)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.19-34, 2012-09

カントの自由は人間の自然的な傾向性から独立して自らに法則を与えるという意味での自律としての自由であり,その法則は人間にとって自然的な自愛や自己幸福を度外視して意志の格律の普遍妥当性のみを純粋に命じる道徳法則である。このような法則に従う自由な意志が道徳的な善の根拠となる。しかし自由な意志は同時にこの法則に背く悪への傾向性を持つ。では,悪への傾向性を持つ人間はいかにして善へと転換しうるのか。主としてカント宗教論の論述に即してこの問題を論じたうえで,あらためて,宗教ではなく道徳の次元で人間の自由を問う意味を考えてみる。

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"動機の問題に特に煩わされることなくただ道徳的な振る舞いが自然に上手にできる人間も悪である。道徳法則による意志規定の意識にしたがって選択意志の自由を十分に行使して行為していないからである" →カント

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