The purpose of this paper is to critically consider Georg Jellinek's views on the origin of human rights. Main points proposed in his writing The Declaration of the Rights of Man and of Citizens (1895) are as follows: the first is that the legal historical origin of codifying human rights does not lie in the French Declaration of 1789, but in the Virginia Bill of Rights of 1776. The second is that the model of the French Declaration is not Rousseau's The Social Contract of 1762, but the bills of rights of American states enacted in and after 1776. The third is that the historical source of the American bills of rights, including the Virginia Bill of Rights, consists in Protestants' struggles for freedom of religion in the days of North American colonies, especially in the English Protestant theologian, Roger Williams' contributions to it. I particularly would like to deal with the second and third points and propose some objections against them. Plainly speaking, it is emphasized that Rousseau's The Social Contract had a certain influence on the French Declaration, freedom of religion stipulated in American bills of rights was nothing but that for Protestants, and the influence of Williams on the codification of human rights was not so great as that of Thomas Jefferson and James Madison.本稿は、G・イェリネクの『人および市民の権利宣言』(1895年初版)で喚起された人権の起源をめぐる問題に1つの決着をつけることを目的とする。イェリネクの主要論点は以下の3つである。第1は、人権の成文法化の法史的起源は、フランスの「人および市民の権利宣言」(「人権宣言」1789年)にあるのではなく、ヴァージニアの「権利の章典」(1776年)にあること、第2は、フランスの「人権宣言」のモデルは、当時の通説であったルソーの『社会契約論』(1762年)にあるのではなく、ヴァージニアの「権利の章典」を含む、アメリカ諸州の「権利の章典」にあること、第3は、このアメリカ諸州の「権利の章典」の歴史的源泉は、北アメリカのイギリス植民地時代におけるプロテスタントの「信教の自由」獲得のための闘争、とりわけ政教分離主義者ロジャー・ウィリアムズの思想と行動にあることである。本稿は、これら3つの論点に対する筆者の見解を述べたものであり、イェリネクの意に反し、(1)ルソーの『社会契約論』がフランスの「人権宣言」に一定の影響力を与えたことは間違いなく、彼のルソー観は一面的にすぎること、(2)1776年6月以降、アメリカ諸州に自由権を含む「権利の章典」が制定されていくが、その実態は、自由の享受にはほど遠く、北部では神権政治、南部では国家教会制の形態が取られていたこと、しかも(3)「信教の自由」の享受者は、アメリカ諸州の全人民ではなく、キリスト教信仰者、特にプロテスタントに限定されていたこと、(4)ロジャー・ウィリアムズの思想とアメリカ諸州における「権利の章典」制定との直接的な歴史的関係は存在しないこと等が強調される。普遍的、中立的意味での「信教の自由」の法史的起源は、ジェームズ・マディソンが起草したアメリカ合衆国憲法修正10箇条における第1条(1791年)にあるが、この制定過程の詳細な検討は今後の課題として残された。本研究は、平成21~23年度科研費(基盤研究(C))(課題番号:21530010)の助成を受けたものである。