著者
中畑 寛之
出版者
甲南女子大学
雑誌
甲南女子大学研究紀要. 文学・文化編 = Studies in Literature and Culture (ISSN:1347121X)
巻号頁・発行日
no.43, pp.29-36, 2007-03-20

ベルトラン・マルシャルによって編集された新しいプレイヤード版『全集』(全2巻1998 & 2003)の刊行により,新世紀のマラルメ研究を支える基盤がひとまず整えられたように思う。しかし,不満がないわけではない。とりわけ,「演劇に関する覚え書」(1886-87),ナショナル・オブザーバー紙掲載の記事(1892-93),「ある主題による変奏」(1895)といった批評を,『ディヴァガシオン』(1897)の前テクストの位置にとどめてしまったようにみえることが非常に残念である。それは,マラルメのようなエクリチュールの書き手のテクストをどのように扱い,どのような視点から考察するのかという重要な問題に関わってくる。マラルメを,とりわけ彼の批評テクストを,決定稿へと精錬させるパースペクティヴにおいて読むのではなく,一方では「生成論」的なまなざしを,他方でバルトがバルザックの校正刷に向けた同じまなざしをそこに注ぐことで,己れの生きた<世紀>に対峙する詩人の態度,つまりマラルメのべつの姿がそれ自体として見えてくるのではないか。マラルメ作品の「生成批評版」はそのような作業のためにこそ不可欠なのである。

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