著者
工藤 遥
出版者
北海道大学大学院文学研究科
雑誌
北海道大学大学院文学研究科研究論集 (ISSN:13470132)
巻号頁・発行日
no.13, pp.453-474, 2013

子育て家庭の孤立や育児不安の拡がりを背景に,日本では「子育てサロン」と呼ばれる地域子育て支援拠点づくりが全国的に進められている。地域に住む乳幼児の親子が集う場である子育てサロンは,育児に関する情報提供や相談等を行うフォーマルな子育て支援機関であるが,大都市では,母親同士が「ママ友」等の育児ネットワークを形成し,インフォーマルな育児援助を交換する場・機会としても機能している。本稿では,少子化と核家族化が顕著な大都市である札幌市で実施した質的調査をもとに,子育てサロンおよびその内部における母親同士の育児援助の機能を,「子育てサポートシステム」の視点から検討した。この分析枠組みでは,乳幼児の母親の子育てを支える育児援助は,制度的支援と関係的支援の2つのサポート構造と,3つのサポート機能(直接・間接・複合サポート)および2つのサポート側面(道具的・表出的サポート側面)でとらえられる。制度的支援としての子育てサロンは,運営形態により,センター型,児童館型,地域主体型,常設ひろば型に4分類できる。各類型の子育てサロンでは,保育や発達教育,リフレッシュ支援といったフォーマルなサポート機能が異なっている。また,施設内部で母親同士が相互に行うインフォーマルな関係的支援のサポート機能も,それぞれ異なる特徴や段階がみられる。また,子育てサロンにおける集まりの一部では,母親同士の互助の進展と並行して,育児ネットワークや小集団の形成がみられ,集まりの3つの段階(coming,keeping,working)を経て,「支えあい」の福祉コミュニティへと発展する可能性もうかがわれる。ただし,「子育ち」の視点に立てば,家庭内および子育てサロンの内部における第一・第二の母子孤立を解消し,子どもの発達に重要となる性別・世代混成的なコミュニティを目指した子育て環境づくりが望まれる。

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