著者
瀬端 孝夫 瀬端 孝夫
出版者
長崎県立大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:18838111)
巻号頁・発行日
no.13, pp.185-197, 2012

日米両政府はMV22オスプレイ輸送機を沖縄の普天間基地に配備する計画を進めている。問題はこの輸送機が,事故が多いきわめて安全性に問題がある飛行機だということである。そのような飛行機を宜野湾市のど真ん中にある普天間基地に配備することは,大いに問題がある。事故が起これば,日米同盟の根幹を揺るがす大問題に発展することは目に見えている。にもかかわらず,野田俊彦総理は,日米地位協定に従ってCH46ヘリコプターの後継機として導入されるので,日本政府がとやかく言う問題ではないとしている。しかし,開発段階から多くの事故を起こしており,最近でもモロッコとフロリダで墜落事故を起こしている。オスプレイは,旧式のCH46ヘリコプターより輸送能力,航続距離,スピードにおいてはるかに優る,海兵隊が大いに期待している輸送機である。その理由は,近年,中国海・空軍が急速に増強されていることである。中国に対する備えという点では,日本も同じ考えである。自衛隊も尖閣諸島等での南西地域において,アメリカ軍との共同作戦を円滑に進めるため,また,戦力の向上のため,オスプレイの力を必要としている。さらに,日米防衛当局から見れば,朝鮮半島有事に対処する観点からもオスプレイ配備は重要である。航続距離がCH46 の5.5倍というオスプレイは,韓国防衛には欠かせない輸送機である。しかし,日本国民の観点からオスプレイ配備を見ると違った点が見えてくる。多くの墜落事故を起こしている輸送機の日本への配備に関しては,野田首相は本来,日本国民の生命,財産を守るべく,アメリカ政府に抗議すべきである。沖縄の仲井眞弘多知事は県民の安全を第一に配備に反対している。政治家として当然のことである。しかし,野田首相は外務省・防衛省の官僚たちから日米地位協定の重要性を聞かされ,日本の国益を守るよりも,アメリカの軍事戦略と軍需産業の利益を優先した行動をとっている。日本国民の安全という国益を守るため,日本政府はアメリカ政府に対してオスプレイの配備の中止を申し入れるべきである。オスプレイ配備を受け入れるということは,在日米軍の半永久的な存続を許すことにつながり,基地縮小と将来の撤廃への道筋を損なうことにつながるのである。また,このオスプレイ配備の問題は,日本がアメリカの属国であることのさらなる証であり,対米関係を最重要視する外務官僚と防衛官僚によって,日本の防衛政策が決定されていることのもう一つの事例である。したがって,オスプレイ配備の問題は,単なる米軍の兵器の更新だけの問題ではない。日米関係の今後を占う大きな問題が背後にあるのである。

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