- 著者
-
小田 格
- 出版者
- 中央大学人文科学研究所
- 雑誌
- 人文研紀要 (ISSN:02873877)
- 巻号頁・発行日
- no.79, pp.63-116, 2014
外国人被疑者・被告人の捜査および公判に関し,従前往々にしてとりあげられてきた問題として,司法通訳が存する。本稿においては,司法通訳に関して,漢語方言が焦点となった判例および事件処理の実例を主たる素材とし,これらと学説や他の言語が焦点となった判例等との比較を通じて,被疑者・被告人の言語運用能力がいかに認定され,かつ,通訳を付すべき言語がいかに選択されるかという点に対し,社会言語学的視座から検討をくわえた。その結果,個々の事例の問題点を抽出するとともに,言語運用能力を認定するための明確な基準・方法が確立されているということはできず,また,通訳を必要とする言語運用能力の水準も一律でないという結論を導出した。さらに,司法通訳を付す言語に関しては,それが当該被疑者・被告人の第一言語でない場合にあっては,各国・各地域の言語の多様性やその使用状況の複雑性に起因する諸点に留意すべきことにも論及した。