著者
櫻井 利江 Toshie Sakurai
出版者
同志社法學會
雑誌
同志社法学 (ISSN:03877612)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.711-746, 2012-09

コソボ事件勧告的意見は領土保全原則は国家間関係でのみ適用され、コソボのような非国家主体には適用されないと判断したが、なぜそのような結論を導くことができるのか実証していない。本稿は、1990年代に発生したザイール国内のカタンガ、コモロ国内のアンジュアン島およびモヘリ島およびボスニア・ヘルツェゴビナ国内のスルプスカ共和国による分離の事例、および国際文書に基づき、国際法における領土保全原則が以下のような意味をもつことを実証しようとしたものである。領土保全原則が既存国家が国内のすべての人民の自決権および人権を尊重し、すべての人民を代表する政府が存在するという条件を満たした国家の領土的現状を保護する意味で捉えられており、以上の条件を満たした国家においては、領土保全原則は人民の分離権行使を制限する役割をもつ。他方、政府による分離集団に対する深刻な人権侵害が存在するという特別な場合には、当該国家に領土保全原則は適用されず、集団の分離権が認められ、当該国家の領土的現状は維持されない。

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条件を満たした国家においては、領土保全原則は人民の分離権行使を制限する役割をもつ。他方、政府による分離集団に対する深刻な人権侵害が存在するという特別な場合には、当該国家に領土保全原則は適用されず、集団の分離権が認められ、当該国家の領土的現状は維持されない。 https://t.co/qxAW2vWqO1

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