著者
井上 和人
出版者
関東学院大学[文学部]人文学会
雑誌
関東学院大学文学部紀要 (ISSN:21898987)
巻号頁・発行日
vol.133, pp.215-232, 2015-12

『関東名残の袂』(宝永五年〈一七〇八〉三月刊)は、江戸の立役中村七三郎の最期物語である。本稿は、『関東名残の袂』が作中で引く七三郎出演狂言について、その描くところの信頼性を確認、次いで得意芸の利用を具体的に示し、七三郎臨終の場についても検討を加えた。まず、七三郎の出演作を引く章段であるが、本文の記事については、配役など正確に狂言の内容を取り入れていた。だが、挿絵には、共演する役者の定紋が相異している例も見られた。次に、七三郎の得意芸をかすめた章段として、巻二の一(本間事)・巻二の三(猫又)・巻三の三(狐)を取り上げた。猫又と狐の場合、これらの所作を得意とした七三郎が、逆に化かされるところに趣向がある。また、七三郎の臨終場面については、『曽我物語』の翻案である可能性を提起した。

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井上和人-『関東名残の袂』考 : ─その演劇的趣向一斑─【本稿の執筆は、『浮世草子事典』(笠間書院、未刊)において、『関東名残の袂』の項目を担当させていただいたこと が契機となっている。】 https://t.co/XdEEXntE43

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