著者
鈴木 善充
出版者
関西大学経済学会
雑誌
関西大学経済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.101-124, 2012-06-10

相続資産が家計資産に占める割合はアンケート調査を利用した既存研究によると、3割から4割程度である。シミュレーション分析をおこなった場合、結果は経済想定や相続資産からの収益の現在価値をライフサイクル資産に含めるかどうかという解釈によって異なる。公開データからは、高所得層に資産が集中していること、現役サラリーマンよりも引退老人世帯が多くの資産を保有していること、高齢者世帯でも収入の増加にしたがって、また住宅・宅地資産が高くなるにしたがって貯蓄残高が増加していることがわかった。アンケート調査から、相続を経験している高所得層は、相続財産額が高い結果をえた。また教育投資額と親子間における職業連鎖による階層の固定化がみられた。高い相続をうけている家計が高い教育投資をおこない、子どもが高いレベルの大学に進学していることがわかった。これらをふまえると、控除額の引き下げという相続税強化の方向に改正された2011年度税制改正大綱は評価できる。今回の改正では、最高税率の引き上げが行われたが、改革の方向性としては、むしろ相続税の合法的な節税策を解消させるのが望ましい。世代間の所得・資産移転を通じた格差拡大を防ぐには、民主党の目玉政策であった子ども手当ては現金支給ではなく、現物支給に切り替えるのが望ましい。

言及状況

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こんな論文どうですか? 今後の相続税改革について(鈴木 善充),2012 https://t.co/AXK37Vw9vt 相続資産が家計資産に占める割合はアンケート調査を利用した既存研究によると、3割から4割程度である…

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