- 著者
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小山 嚴也
- 出版者
- 関東学院大学経済研究所
- 雑誌
- 経済系 (ISSN:02870924)
- 巻号頁・発行日
- vol.215, pp.10-23, 2003-04
本稿では,企業に対するある特定の要請の発生から社会的要請の形成に至る一連の過程について,issue マネジメント論の成果,ステイクホルダーの概念,社会問題の社会学の理論などを手がかりにしながら考察する。 そもそも,ある特定の要請は,期待される企業活動と現実の企業活動との間にギャップが存在し,その様なことは問題(issue)であると特定のステイクホルダーが認識するところから生まれる。そして,その様な要請に対する企業側の応答とも相俟って,他のステイクホルダーによるissueの認識,共有,特定の要請への正当性の付与がすすみ,ある特定の要請が,その「強度」を強めながら「存在範囲」を社会全体に広げたときに,その様な要請は社会的要請となる。その過程では,issueの複合,連鎖によって,複数の要請が併存するかたちで社会的要請が形成されたり,新たな要請が社会的要請化していくことがある。また,当初の要請が個別企業に対するものであった場合,issueの共有やissueの連鎖などに伴って要請の対象が個別ないし特定企業から企業全般へと変化することもある。