- 著者
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四宮 正親
- 出版者
- 関東学院大学経済研究所
- 雑誌
- 経済系 (ISSN:02870924)
- 巻号頁・発行日
- vol.237, pp.28-43, 2008-10
本稿は,第2次大戦前における日本の自動車流通販売について考察し,特に外国メーカーの近代的な自動車流通販売体制の導入と,そこでの外国メーカーとディーラーの関係に着目した。外国メーカーが採用したフランチャイズ・システムにもとづくディーラー網の構築と,潜在需要の開拓に結びついた販売金融制度は,従来の輸入代理商を通じての販売に比べると,日本の自動車市場を大きく開くことにつながった。ただし,自動車先進国アメリカの,成熟した自動車流通販売システムの日本への直接的な導入は,外国メーカーと傘下ディーラーの関係に大きな問題をもたらした。両者の関係は,必ずしも協力的なものとは言えず,むしろ抑圧的でさえあった。そしてそれは,フランチャイズ方式にもとづくディーラー・システム自体のもつ構造的な問題であったため,交渉力確保のためディーラーの組織化の動きを促した。