- 著者
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堀江 典子
萩原 清子
- 出版者
- 東京都立大学都市研究センター
- 雑誌
- 総合都市研究 (ISSN:03863506)
- 巻号頁・発行日
- no.82, pp.93-103, 2003
多基準分析とは、複数の基準で代替案を評価し選択を支援しようとする分析手法の総称である。費用便益分析が費用と便益を全て貨幣尺度で捉えて比較するのに対して、多基準分析では複数の基準をそのままの尺度で評価し、それらを何らかの方法で統合しようとする。コストや効率性だけでなく、環境問題や公平性の問題といった時として相反する複数の目的が意思決定において考慮されなければならない社会状況の中で、貨幣尺度での評価が困難な基準を含めて多基準として明示的に扱うことができる手法は時代の要請でもある。しかし、多基準分析の範疇には様々な手法が含まれており、分析手順も理論的根拠も同じではない。本稿では、多基準分析についての歴史的経緯を振り返り、理論的根拠を整理したうえで、多基準分析の特色と今日的意義を明らかにした。また、多基準分析のうち、公的な意思決定をはじめ様々な意思決定の場面で多くの適用が見られる多基準意思決定分析MCDA(多属性意思決定分析MADAとしても知られている)の手順に沿って問題点を考察し、意思決定支援における可能性を示すことを試みた。多くの多基準分析手法における最大の問題はウェイティングシステムの恣意性である。この懸念を克服するためには、社会の選好をより反映させることが可能なウェイテイング手法を開発することが求められる。合意形成と意思決定のためにプロセスの透明性とわかりやすさを高めることによって、'audit trail'を明らかにする。このように判断の責任の所在を示すことによって恣意性に歯止めをかけることが必要であると考えられる。