著者
青木 聖久
出版者
日本福祉大学福祉社会開発研究所
雑誌
現代と文化 : 日本福祉大学研究紀要 = Journal of Culture in our Time (ISSN:13451758)
巻号頁・発行日
vol.136, pp.75-92, 2017-09-30

本稿は,筆者の精神障害者との30 年間のかかわりや,研究の蓄積を基にした上で,働くことに関する先行研究から,精神障害者が生きづらさを持ちつつも働くことの意義について論じたものである. 精神障害者は,幻覚や妄想等の疾患,思考や対人関係の苦手等の障害,さらには,自らが持っている内なる偏見や周囲から受ける外なる偏見等の生きづらさを抱えている.とはいえ,概して精神障害者の生きづらさはわかりづらい.なぜなら,見た目と経験則によって理解しづらいからである.そこで,本稿ではこれらの生きづらさを可視化しやすいように,具体例等を挙げながら,①精神疾患,②精神障害,③内なる・外なる偏見に分けて論じた. 一方で,人は精神障害の有無に関わらず,働くことによって,物理的,あるいは,精神的に多くのものを得ることができる.本稿では,その働くということについての語源,働くことの価値,働くことにより達成可能な社会的つながりや社会的承認等について,経済学者や労働法学者等の先行研究を通して論じた.働くはwork とlabor に分けることができる.とりわけwork は,活動によって得られる作品を含め,広い意味を持つ.また,働くことの価値としては,経済的な報酬は一つの要素にすぎない.視点を広げることによって,働くことは人間形成をはじめとする多様なものが得られるのである. そして,本稿では精神障害者が生きづらさを持ちつつも,働く意義がどこにあるのかについて述べた.精神障害者は生きづらさにより,働き方に一定の工夫や配慮は求められよう.だが,働くことによって,豊かな人生につながる側面が大いに認められるのである.また,働くことを考えるにあたっては,精神障害を持っているからこそ提供しうる,他者には代えがたい事柄としての活躍の場を創出することも大切となる.加えて,社会は,ストレングス視点で捉えれば,希望と可能性に満ちている.精神障害者は,働くことを通して社会とつながり,自己有用感を得られるといえよう.

言及状況

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青木聖久先生 。「権利と義務」。日本では「義務」。「人間は,誰かに喜んでもらっている自分を発見して成長する」「誰かの支えになっているという実感が得られなければ,『生きていて良いと思える』ようにはなれない

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CiNii 論文 - 精神障害者が生きづらさを持ちつつも働くことの意義 https://t.co/FGddXpaV9s
> 最後が6と7である.人が,本当の意味で求めているのは,失敗した時や傷ついた時に,なぐさめとして慰撫されることではなく,嬉しい時に,共感してくれる人や場ではないかと思う.(略)だが,嬉しいときに報告できる人や場がないことは,孤立感を伴うほど,むなしいもの https://t.co/yNFMH4sDfb
> 明日に向かう,未確定部分への挑戦なのである.過去は変えられなくとも,未来は,自ら及び社会の可能性を信じる (略) > 大事なことは,「失敗 or 成功」というカテゴリーではない.そうではなく,挑戦するか否か, のカテゴリーで考えることこそが肝要なのである. https://t.co/yNFMH4sDfb
(4)ストレングス視点による社会の捉え方 ------------------------------ > 支援者からの伴走関係によるかかわりが求められよう.支援者のかかわりは,「○○さんに,してあげる」という to,あるいは,引率関係ではなく,「○○さんと,ともに」という with の併走関係が大切 https://t.co/yNFMH4sDfb
(続き) 7. 「魅力的である」, 8. 「個人を成長させる」, 9. 「個人を超える価値につながる」, 10. 「求めて初めて得られるものである」 https://t.co/yNFMH4sDfb
> 杉村は,良い仕事とは, 1. 「仕事を意味あるものと見なす前提にする」, 2. 「仕事に対する真剣で責任感ある態度を求める」, 3. 「生活の必要を充たす」, 4. 「共同生活に貢献する」, 5. 「善い生き方と重なる」, 6. 「平衡のとれた生活とともにある」, (続く) https://t.co/yNFMH4sDfb
田坂 > 仕事における10のキーワードとして「思想,成長,目標,顧客,共感,格闘,地位,友人,仲間,未来」 高橋 1. 「功利的仕事観」(お金を儲けたい,出世したい等) 2. 「規範的仕事観」(人類のために役立ちたい等) 3. 「内因的仕事観」(楽しい,やりがいがある等) https://t.co/yNFMH4sDfb
橘木 1. 「食べるため」, 2. 「他人に認められたいため」, 3. 「働くことによる成果の美を求めるため」, 4. 「労働には喜びがあるから」, 5. 「余暇の時間を有意義に送れるための糧を得るため」 「働くことによる間接的な価値」 https://t.co/yNFMH4sDfb
(3)内なる・外なる偏見 ---------------------------- > 前述のように,就労制約されやすい精神障害者は,結果的に経済困窮状態に陥ることが少なくない.その彼らの日常生活の困難さに対して,支給される所得保障制度が障害年金なのである. https://t.co/yNFMH4sDfb
(1)精神疾患 -------------- > 自分の意見を受け入れて貰えない悔しさ,これからどのようになるのかという先が見えない不安 > 「色んな診療科で薬を出されるが,精神疾患の急性期に処方する精神薬ほどよく効く薬は他にない」 (略) > 「薬という車いすに乗った障害者」 https://t.co/yNFMH4sDfb
青木聖久先生 。「権利と義務」。日本では「義務」。「人間は,誰かに喜んでもらっている自分を発見して成長する」「誰かの支えになっているという実感が得られなければ,『生きていて良いと思える』ようにはなれない / “CiNii 論文 -  精神障害者が生きづらさを持ちつつも…” https://t.co/DxiDCJqKDE
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