著者
井尻 香代子
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学論集. 人文科学系列 (ISSN:02879727)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.163-179, 2017-03

現在多様な言語で作られているハイクの普及プロセスと特色を明らかにするため,筆者はアルゼンチンのケースについて,受容プロセス,季語,韻律,価値観の変化という四つの視点から調査・分析を行った。その後,季語については現地特有の動植物や時候の変化,生活習慣や宗教的,文化的行事を表現する多くの言葉が,豊かな意味と感性を含み受け継がれていることに気づくようになった。移民国家であるアルゼンチンにおいてこうした言葉のグループはさまざまな側面を含みつつ,徐々に共有されることとなった感受性の目録と捉えることができる。本稿では,現時点で重要と思われる言葉を中心に歳時記構築への第一歩を踏み出すことを目指している。第1 章では日本の伝統詩歌において季語がどのように誕生し,変化してきたのかを概観し,現代の俳句季語をめぐる状況を考察する。第2 章では,国際ハイク研究者や実作者の近年における季語の扱いを検証する。そして第3 章では,アルゼンチンのハイク作品集から季語としてふさわしい語を抽出し,歳時記構築に向けた試みに向けていくつかの例を提示したい。この作業は,アルゼンチン・ハイクの特色を理解し,ひいては国際ハイクの現状をあぶり出す試みとなるだろう。

言及状況

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井尻 香代子 -  国際ハイクと季語II : アルゼンチン歳時記の構築について https://t.co/tTznKIALAg

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