- 著者
-
植田 章
- 出版者
- 佛教大学社会福祉学部
- 雑誌
- 社会福祉学部論集 (ISSN:13493922)
- 巻号頁・発行日
- vol.14, pp.37-50, 2018-03-01
障害者の高齢化が進むにつれて,障害者支援の現場でも新しい課題が持ち上がっている。とくに,作業活動を軸に支援を提供する日中活動の場では,利用者の加齢に合わせ,どのような内容を提供していけばよいのかといった悩みや,人生の後半をこのまま変わらずに過ごすことでよいのかといった迷いが生じている。 本小論は,現場の課題に着目し,NPO 法人大阪障害者センターの「障害者の高齢期を支える支援プログラム開発プロジェクトチーム」で取り組んだ知的障害者を対象とした高齢期の支援プログラムの開発モデルの提案と,高齢期支援プログラムの基本的な考え方について述べたものである。 開発モデル案として一つは,「健康づくり」を目的とした活動を取り上げ,客観的なアセスメントによる身体機能の把握が基礎になること,知的障害者の場合,自らの身体の不調を認識したり,表現したりすることが困難な場合が多いことから,日常的に健康チェックを行ったり,様子を注意深く観察したり,丁寧に本人に聞き取るなどして,プログラムを実行することが望ましいことを明らかにした。二つめは,その人の過去の出来事や社会とのつながりについて回想する「自分史の振り返り」プログラムを取り上げている。こうした取り組みから,元気に社会で活躍した時期の記憶が,その人にとって生きる励みになるということを浮き彫りにした。 さらに,開発モデル案をふまえて高齢期の日中活動の考え方として,中年期・高齢期においては身体機能の低下を防ぎ,生活能力を維持・向上するための「生活プログラム」をベースに展開されることが求められてくることと,これまでと同様に,障害者が生産的な活動に参加することを通して,生き甲斐や達成感を持つことができるような支援も続けていかなくてはならないことについても述べている。高齢知的障害者支援プログラム日中活動介護保険制度