- 著者
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山田 航
- 出版者
- 名古屋学院大学総合研究所
- 雑誌
- 名古屋学院大学論集 社会科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; SOCIAL SCIENCES (ISSN:03850048)
- 巻号頁・発行日
- vol.54, no.4, pp.153-170, 2018-03-31
本稿は,介護人材の需給ギャップが拡大している中,近年軽視され始めている介護保険制度の課題に再度注目し,介護人材の不足が発生する要因を分析するとともに,その解消に向けた適切な政策を検討することを目的としている。具体的には,介護保険制度の導入による制約を反映した簡易な経済モデルを用いて介護報酬改定の影響について分析した。 本研究で得られた主な結果は,第一に,介護報酬改定による賃金の改善は,短期的には雇用の増加や,サービス供給の増加を達成するかもしれないが,長期的には,その効果が維持されないことが示された。第二に,介護市場の需給ギャップ解消のためには,介護サービス供給をシフトさせる政策が必要であることが示された。第三に,需給ギャップの解消に向けた政策として労働生産性の向上,及び労働供給を全体として増加させることの2つのうち,労働供給の増加を進めたほうが,より高い政策効果が得られることが示された。